第18回日本肝がん分子標的治療研究会

当番世話人挨拶

 本邦において、切除不能な肝細胞癌に対してソラフェニブが使用可能になってから10年が経過しました。この間、他の悪性腫瘍では分子標的治療の発展が目覚ましく、低分子化合物、抗体薬ともに多数の薬剤が上市され、標準治療に組み込まれてきました。近年では、チェックポイント阻害剤が従来の化学療法では見られなかったような効果で大きな話題となっています。一方、肝細胞癌領域では、長きにわたり進歩の蚊帳の外にあったように思われます。
 B型肝炎、C型肝炎診療の進歩と並行して生活習慣病関連肝癌の増加が大きな問題となっています。これら非B非C肝癌においては高危険群の設定が困難であり、より進行した状態で見つかるケースが増加しています。また、比較的肝機能が良好でより積極的な治療の余地がある症例が多く含まれます。肝機能に関しては、核酸アナログ投与下のB型肝炎・SVR後のC型肝炎症例においても同様です。このように肝細胞癌の背景病態に関して、現在は過去数十年で最も大きなパラダイムの転換期であると言えます。
 さて、2017年6月に待望の新薬が登場しました。ソラフェニブのセカンドラインとして使用可能になったレゴラフェニブによって、進行肝癌に対する薬物療法の分野においてより精緻な議論を展開する道具立てが整いつつあります。本研究会開催時にはレゴラフェニブの使用開始から約1年が経過し、治療効果や副作用について、施設ごとに一定の見解が出てくる頃と思われます。また、2018年中頃から堰をきったように新規薬剤が登場することが期待されています。レンバチニブを皮切りに、ラムシルマブの結果が出てきます。ニボルマブから始まる免疫チェックポイント阻害剤に関する臨床試験も、次々と開始されています。
 本研究会では、これらの薬剤の最新の知見もエキスパートからご講演いただく予定です。多くの皆様にご参加いただき、様々な視点からの討議が行われることを期待しております。

第18回日本肝がん分子標的治療研究会 当番世話人
東京大学消化器内科 小池和彦

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